財産がない場合には同時廃止
自己破産しようと決意するに至ったような債務者には、すでにめぼしい財産は残っていないのが普通でしょう。
破産手続に必要な費用を捻出できるだけの財産がない場合には、それ以上破産手続を進めてみても意味がありません。
このような場合には、破産手続開始決定と同時に破産手続を終結してしまいます。
これを同時廃止といいます。
現在では、自己破産を申し立てる人の9割以上が同時廃止になっています。
なお、個人事業主や会社などの法人の代表者(取締役や代表取締役)が自己破産を申し立てる場合には、たとえ財産が全くなくても同時廃止になることは、ほとんどないというのが実情です。
なぜ同時廃止というのか
債務者にめぼしい財産が残っていない場合には、破産管財人を選任して、破産手続を進めてみても、破産者には債権者に配当できるような財産は残っていないことが明らかですから、時間も費用もムダになります。
そこで、破産手続開始決定だけをしておいて、そこから先の手続には入らない(というより、破産という手続全体を打ちきってしまう=廃止してしまう)というわけです。
破産手続開始決定と同時に、破産手続を廃止する決定をするので、「同時廃止」といいます。
同時廃止するための基準はどうなっている
同時廃止になるかどうかは、残っている財産の換金価値によって決まります。
たとえば、残った財産が家財道具程度しかないような場合は、通常は換金しても10万円にもならないもので、ほぼまちがいなく同時廃止になるといってよいでしょう。
自動車を所有している場合には、それが廃車寸前のものであれば資産価値はありませんが、売却価格が50万円以上あるような場合は、管財事件となることもあります。
なお、破産者に不動産がある場合には原則として管財事件となるはずです。
しかし、負債の額がその不動産の価格の1.5倍以上あるようなときは、同時廃止になることも認められています。
同時廃止の決定がなされると破産手続はすぐに終了してしまいます。
管財事件のような居住制限や通信の秘密の制限などはありませんし、そもそも処分すべき財産もないわけですから、財産の管理・処分の権限も失うことはありません。
ただ、同時廃止の場合も破産者になったことには変わりありませんから、一定の資格や職業に就くことが制限されます。