免責が認められない場合とは
会社などの法人が破産する場合には、法人は破産手続が終了すれば、消滅してしまいますから、仮に借金が残ってしまっても免責するという必要はありません。
一方、個人の場合、とくに消費者金融などからの借り入れや、クレジット・カードの使い過ぎのような「消費者破産」では、免責が認められないというケースはそれほど多くありません。
ただし、免責は債務者に立ち直りのチャンスを与え、救済するための制度ですから、その必要がない人については免責は認められません。
そこで法律では免責を許さない場合(免責不許可事由)を定めています。
ただ、「免責不許可事由があったら必ず免責不許可になる」というわけでもありません。
免責不許可の理由があっても、裁判所の裁量によって免責が認められている例は多数あります。
結局は裁判官が状況を総合的に判断して、免責の決定をしています。
主な免責不許可事由
①申立人が債権者の利益を直接害した場合
破産者が財産を隠したり、その財産的価値を減少させたような場合や、返済不可能状態であるにもかかわらず、その状態でないかのように債権者を信用させて、さらに金銭を借り入れたような場合など
②手続きの円滑な進行を妨げたり、間接的に債権者の利益を害した場合、説明義務を尽くさなかったような場合
ウソの事実を記載した債権者一覧表を裁判所に提出したり、財産状態を偽って陳述したような場合など
③特定の債権者に特別の利益を与えるために担保を提供したり、弁済期前に弁済した場合
④浪費・ギャンブルなどによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担した場合
⑤免責の申立の前フ年以内に、免責を得ていた場合
⑥その他破産法で定める義務に違反したこと
※免責不許可事由があっでも、裁判官の裁量により免責決定がなされる場合もあります。
免責についての判例
■遊興の借金でも免責された例
バー・キャバレーの女遊び、ギャンブルの射倖行為が過怠破産罪にいうところの浪費または射倖行為に該当するとしても、「過大なる」債務にあたらないとして、免責を許可した(神戸地裁・明石支部決定・昭和58年6月15日)。
■割合的一部免責が認められた例
破産者の不許可事由の内容およびその程度、破産者の現在の健康状態を考慮して、破産宣告時における元本の一割相当額につき免責を認めず、残りの部分については免責を認めた。
また、一年間履行を猶予し、その間の遅延損害金は免責した(東京地裁決定・平成6年2月10日)。